省エネ法(正式名称:エネルギー使用の合理化に関する法律)というものが今回の改正を含めて、過去3回出されています。
昭和55年交付の省エネ法
を旧省エネ基準 平成4年の上記基準の改正を
新省エネ基準 平成11年の上記基準の改正を
次世代省エネ基準そして今回、
平成25年1月31日交付の基準を
改正省エネ基準 と呼んで区別しています。
改正省エネ基準の解説は、前にブログで数回に別けて書きましたが、とにかくややこしくなってきています。
それはともかく、今回の
改正省エネ基準で日本が
次世代省エネ基準の6区分訳けから、Ⅰ(北海道地域)を1と2に、Ⅳ(関東、東海、近畿、中国、四国、九州)の地域を5と6に分けて合計8つの区分に細かく別れました。
九州北部は生活すると冬場は結構寒いんですが、関東地方と比べると冬場でも湿気があることは実感できます。それだから関東地方より一つ数値が上の地域に指定されているんだろうと思っていますが。
さて前回の続きになります。
上に書いた省エネ法を履行するために建築有資格者に対する講習会が盛んに行われていることは既に書きましたが、こと住宅に限って書くと、住宅をダウンジャケットで覆い尽くすようにしましょうということに実感としては近い。建築ってのは暑いから断熱材を脱ぎ捨てるという事はできるわけじゃないので、年中、ダウンジャケットを着ていることになります。
今回の改正で特に力が入れられているのが
外皮性能というもので、建物の開口部、外壁、屋根、床等の熱貫流率(U)を下げなさいというもの。特に開口部からの熱損失が大きいので、開口部の断熱・遮熱への方針の影響が大きくなっています。
外皮性能を高めるには開口部が少ないのが一番効果的ですが、開口部が小さいと今度は夏場は熱量の取得が少なくなるのはいいにしても冬場の熱量取得が減ることになりますので、その両方を満足するために最低でも複層ガラスやLow-e複層ガラスを当たり前に使いなさい。ということになってきます。またサッシもアルミから樹脂製のサッシへの移行を進めています。
確かにLow-e複層ガラスすれば遮熱・断熱の効果があるということはわかりますが、そのガラスの製造可能面積、あるいは対応できる樹脂サッシのサイズなどの制限があれば、上に書いたような大開口など望むべくもない上にメーカーの都合で決められたサイズの窓しか取り付けられない事になります。
オーダーメードとなると、それこそ回らない寿司屋(スミマセン、我が家では寿司屋は回るのが当たり前なもんで)に行った時、壁に料金表も何もないかあっても時価と書かれているような寿司屋じゃいくらかかるのか恐ろしくておちおち食べてられない気持ちになりません?・・・・そんな店、恐ろしくて行ったことないので想像ですが・・・それと同じようなもの。
開口部に関しては密閉度の高いものが省エネ効果があるために、嵌殺し窓を多くして一部分のみを通風用にする設計手法も考えられます。
この手法は写真写りがいいので、雑誌掲載目的のための住宅によく見られます。風通しを良くして居住性を高めることを犠牲にしていることがありありですが、窓枠がなく開口部が一枚ガラスですので、室内から眺めもシンプルでスッキリ見えます。
これは設計者としては己の顕示欲を満たすには十分魅力的なアイテムです。設計者の自己満足のために居住者の快適性を損ねた欠陥住宅と思いますが、そうした開口部の処理も省エネとして効果的と言われることになるのでしょう。
本来の住宅の設計の目的と違うところで基準が決められてきています。
夏を旨とすべき兼行さんの時代から、いまや冬を旨とすべきなように考え方が変わってきているようです。たしかに冷房の期間より暖房の期間が長い(沖縄を除く)日本では、基本的には暖房を省エネ化することのほうが理にかなっているのですが、夏は亜熱帯モンスーンという風土であることも、ますます省エネ性と住宅の開放感の快適性の対応の難しさに拍車をかけてきます。
兼行さんの時代では温暖化の問題もフロンガスの問題も空気汚染の問題も無く、3ヶ月毎の四季はくっきりしていたのでしょう。しかしその時代と現代とは比べようもなく、春も秋も来たかと思ったらあっという間に過ぎてしまいます。その意味では、地球温暖化の影響もと言われていますし、そのための省エネルギー基準だということも分かります。
しかし上に書いた省エネ性と開放感のある気持ちのいい住宅の居住空間の整合性をどう取ればいいのか、まだ見えません。
高気密高断熱住宅は確かにエアコン一台で家の中全てに快適温度を保てるようですが、息苦しさを覚えるといいう感想も目にすることも多い事実があれば、ただただ数値的にそして技術的な手法だけで住宅を作り出せば事足りるという考え方で対応している省エネ法への疑問が募るばかりですが、2020年以降は、省エネ基準を満たさない住宅は建てられなくなります。省エネ法は国と国の約束なので守れという姿勢にも反発を覚えます。
内外ともコンクリート打ち放しや総ガラス貼りなどのカッコよさだけを追求した住宅や建築は2020年からは作ることができなくなります。
そのように見るからにただでさえ暑いわ寒いわで住みにくそう住宅でも、それが依頼者の納得づくの上であれば誰に文句も言われる筋合いのないはずですが、住宅のエネルギー消費量が結構なレベルにあるというデータを見るたびに悩み続けています。
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